フューチャーインが自治体向けに提供する「登退庁・在席表示確認システム」は、従来ディスプレイごとに専用PCが必要で、運用コストがかかり設置も困難だった。そこで、タッチパネルにも対応したサードウェーブのAVシステムを採用。安定性の高いシステムをより安価に構築でき、スタイリッシュな設置も実現した。
ディスプレイの裏側にコンパクトな受信機が取り付けられている(左)。タッチパネルにも対応(右)。
フューチャーインは自治体向けのICTソリューションを幅広く展開しており、その1つに議員の在席・不在を表示する「登退庁・在席表示確認システム」がある。これまでも複数の自治体に提供してきたが、ディスプレイ近くにPCが必要で、ディスプレイの設置台数と同じ数だけPCが必要という課題があった。また、壁面に設置するディスプレイに合わせてPCも壁面設置が必要だが、そもそもPCは壁面に設置するよう作られていないため設置自体が困難だった。そこで、1つのリソースから複数のディスプレイに映像を配信できるAVシステムを模索していた。
その際入力用端末としてタッチパネル式のタブレットを利用するケースがあり、タッチパネルにも対応したAVシステムが必要だった。複数の製品を検討した結果、フューチャーインが選択したのが、サードウェーブのAVシステムである。具体的には、3D対応HDMI EDID信号保持機「TMDS-EDID」と、HDMI・VGAマルチキャスト対応 AV over IPエクステンダー「CH-U350TX(送信機)/CH-U331RX(受信機)」だ。ソース機器から「TMDS-EDID」が最適な映像信号を送り、その信号を「CH-U350TX」が複数の「CH-U331RX」に対して送信。離れた複数のディスプレイに対して、同様の映像を送信できる。選択理由をフューチャーインの深見氏は、「タッチパネル対応のエクステンダーは、(当時は)サードウェーブの製品しかありませんでした。PCよりも安価で安定性が高く、ディスプレイ裏にスタイリッシュに設置できることもあり、導入を決めました」と語っている。
豊田市庁舎
サードウェーブのAVシステムを利用した「登退庁・在席表示確認システム」のファーストユーザーが、豊田市である。議会事務局で議事堂の管理や議員のサポートなどを行う豊田市議会事務局 担当長 石川貴祥氏(※所属・役職名は取材当時のもの)は導入の背景を次のように語る。「2021年7月末、落雷の影響で2000年から利用するアナログ式在席表示盤が突然故障。既に部品がなく修理不能でした。取引があったフューチャーインに相談したところ、同システムを知ったのです」フューチャーインは、自治体ごとにシステムをカスタマイズして提供しており、豊田市は表示箇所を従来と同じ3か所に、オンプレミスではなくASP版を選択した。ディスプレイは事務局に1台と、議員控室などがあるエリアの廊下に2台。事務局のディスプレイ下には入力用のタッチパネル端末があり、登庁した議員が入力する。閲覧だけなら、職員の端末からも可能だ。システムは2022年1月から稼働。議員からは「字が大きくなって見やすくなった」、事務局職員からは「議員のプレゼンスがどこでもわかるので便利」と高評価を得ている。
本システムは管理画面から表示内容を簡単に変更できる。以前は、透明のプラスチック板に議員名のシールを貼って作成していたが、今回のリプレースで、このような手間が不要になった。お知らせなど別のコンテンツの表示も可能だ。「事務局には、定例会中などは他部署の職員から議員の登庁確認の内線が頻繁にかかっており、応対に苦慮していました。今後は他部署の職員にも公開し、各自でプレゼンスを確認してもらおうと考えています」(石川氏)。
フューチャーインの「登退庁・在席表示確認システム」は壁面ディスプレイ(左)のほか、スマートデバイスや自席PCからも閲覧できる(右)。
サードウェーブの対応について深見氏は、「世界的な半導体不足のなか、迅速に調達いただきスムーズに導入できました。代替機の供給や機器の操作説明や検証など、手厚いサポートにより安定稼働が実現しています」と語っている。フューチャーインは、今回生まれ変わった「登退庁・在席表示確認システム」を、他の自治体へも展開していく。「アナログの表示盤を継続利用されていたり、故障したままになっている自治体の皆様は、ぜひご検討ください」(深見氏)。